先日開催された「ワークスチューニンググループ合同試乗会」の様子を、事務局としてまとめたレポートをお届けします。今回のレポートは、参加各社のデモカーやチューニング内容を、試乗・撮影を通じて実際に体感したインプレッションとともに紹介しています。メーカー直系ならではの技術や開発思想、そして普段は見られない細部の工夫など、チューニングに関心のある方にも参考になる内容が満載です。走りを磨きたい方や、パーツ選びのヒントを探している方にもきっと楽しんでいただけるはずです。ぜひご覧ください。
TRD、無限、NISMO、STIの4ブランドによるワークスチューニンググループは2025年10月22日~24日、モビリティリゾートもてぎの南コースでメディア向け合同試乗会を開催した。
2015年以降、毎年開催されているこの試乗会だが、もてぎでの開催は2019年以来、6年連続。
天候にも恵まれ、南コースでのデモカー試乗を中心に、製品やコンセプトをアピールした。
STIスバルテクニカインターナショナル株式会社
[モデル1]S210
STIが持ち込んだのはWRX S4 STI sport R EXと、それをベースに仕立てられたコンプリートカーのS210、そしてフォレスターの3台。STIのクルマづくりの根底にあるのは「誰がどこで乗っても意のままに扱える」というもの。3台ともにそこを目指しているのはもちろんだが、それがもっとも具体的に表現されているのはやはりコンプリートカーのS210だろう。ニュルブルクリンク24時間レースに参戦しているマシンから得られたさまざまな知見から生み出されたパフォーマンスパーツによって、STIが目指す「意のままに……」が実現されている。その内容は、専用の吸排気系とそれに合わせて最適化されたECUによって300psを発生するエンジン、そのエンジンや出力特性に合わせたセッティングとされたCVT、AWDもS210専用のセッティング(スポーツモード時)となっているほか、ブレンボのブレーキシステムが採用されたブレーキは電動ブースターの制御が専用チューニングとなり、効きだけでなく踏力に応じた効き味とされている。さらに足まわりはタイヤサイズの大径化、スプリングレートのアップ、電子制御ダンパーのセッティングもそれらに合わせた専用セッティングとなっている。また、STIならではのドロー機構を持つ補強パーツによってボディが持つ微細な“遊び”を排除し、ボディ剛性を適切化。空力面もホイールアーチに装着された専用デザインのサイドガーニッシュでタイヤハウス内の内圧を下げる効果を高めており、車両の安定化に貢献している……等々、専用セッティングや変更点を列記していくと、それだけで文字数が足りなくなるほど多岐に渡っている。
それらの効果は短時間の試乗でもしっかり体感できた。エンジンはレスポンスに優れ、アクセルのちょっとした踏み足しにも即座に反応。ターボエンジンであることを忘れそうになるほど。足まわり、AWD、補強パーツにエアロパーツ……それらの合わせ技による絶対的な安定感は、S210に初めて乗った筆者にも絶対的な安心感を与えてくれた。とはいえ刺激がない訳ではない。踏んでいけばレスポンスに優れたエンジンが素早く速度を上げ、ブレーキを踏めばこれまた即座に速度を殺していく。コーナーでもタイヤはしっかり路面を掴み続け、勢いよく立ち上がっていく。そうした一連の操作に余裕をもって楽しめるのだ。STIのSシリーズはこれまでの作品も素晴らしい仕上がりだったが、このS210もそこは変わらず素晴らしいクルマになっていた。この走りを知ってしまうと、限定数がすべて売り切れてしまっていることがなおさら惜しく感じてしまった。
[モデル2]WRX S4 STI Sport R EX STI Performance(パーツフル装着車)
S210の装着パーツはいずれも専用品で、それ単体で購入することはできないが、通常販売されているパフォーマンスパーツによって、S210のような走り、乗り味に近づけることはできる。それを実践しているのが今回持ち込んだWRX S4 STI sport R EX STI Performanceだ。市販中のパフォーマンスパーツのほか、トランクバーやフードガーニーなどの試作パーツが注目ポイント。いずれもSTIが追及する「意のままに……」を実現するためのものだが、同様のパーツはレヴォーグなど、ワゴンボディ用も開発されていた点に注目したい。
[モデル3]フォレスター
走りの楽しさにはクルマが発する“音”の効果も大きい。フォレスターに用意されていたパフォーマンスマフラーは音量こそ変わらないものの、音質を調整。気持ちのいいサウンドが楽しめる。そこにボディ下部に装着された各種スポイラーなどのエアロパーツの効果も組み合わさり、日常でも気持ちのいい走りが楽しめるものに。オーナーなら、その変化をしっかりと感じ取ることができるだろう。
TRDトヨタカスタマイジング&ディベロップメント
[モデル1]86ZN6 Re:Evolution Package(仮名)
86、ハイエース、ハイラックスの3台を持ち込んだTRD。86は先代だが、2024年の試乗会に持ち込んだ車両を継続開発している。目指すところは2014年に販売されたコンプリートカー、14R-60だ。今年は下まわりの試作補強パーツが追加され、ボディ剛性をさらに強化。比較用にノーマル車両も用意され、乗り比べることでその効果が実感できるようになっていた。デモカーで走り出すと、まず、動きの軽さの違いを感じた。コーナーでもノーマルならリアが流れ出しそうな領域でも、リアタイヤは路面を掴み続けており、その粘り方に明確な差を実感した。もちろん、タイヤ銘柄が違うのでその影響は無視できないが、強化されたボディによってボディの微妙な変形が抑制され、トラクションをしっかり掛け続けられるようになった効果なのだろう。動きの軽さも同様で、聞けば、試乗デモカーは軽量化もされておらず、むしろ装着パーツの分、重くなっているとのこと。動きが軽く感じたのも、補強の効果で無駄な動きが減ったことによるものでは、という説明があった。効果のある部分に狙った効果が得られるような形状、取り付け方がなされていることもあり、その効果は確実。装着されたものは試作品で、市販時期は来春予定とされていた。発売時にはパッケージ化を計画中という。ZN6はまだまだ現役。中古車価格も手頃感があるものも増えており、こうしたパーツでさらに走りの質を高められるのはオーナーにとってはうれしいところだろう。
[モデル2]HiACE TRD Selection
TRDのエンジニアがモータースポーツで実績のあるブランドを選りすぐり、仕立てたハイエース。TRDは以前からレース用の海外製品を輸入しており、KING SHOCKSのダンパーやKaiserのデフ、TJMの追加ハイビームが装着されている。乗り込んで驚くのは、その乗り心地のよさ。働くクルマとして高い評価を得ているハイエースだが、乗り心地を改善したいと思っている人は多く、TRDが独自にセレクトしたKING SHOCKSのダンパーは、そんなニーズに応えたもの。BRIDEのコンフォートスポーツシートも良好な乗り心地に少なからず貢献しており、長時間運転でも苦にならないハイエースに仕上がっていた。
足まわり以外に注目したいのがKaiserLockerのデフ。構造や効き方はクラッチ多板式LSDとはまったく違う独自の作動原理ながら、差動制限効果が期待でき、山道など高低差が大きい登りのヘアピンのようなオープンデフでは上がれないような場面でもしっかりトラクションが掛かり、困らされるようなことはないはずだ。まさに“もっとこうだったらいいのに……”を具現化した、そんな内容のハイエースになっていた。
[モデル3]HILUX
ハイラックスは海外仕様と同様の迫力あるワイドボディスタイルが印象的だが、まさにそのワイドボディを実現できるキットがこのクルマの注目ポイント。とはいえ、フェンダーを後付けしただけのものではない。ノーマルの乗り味を変化させないため、フロントの足まわりはダンパーだけでなく、アームやドライブシャフトまですべて交換されている。標準車から乗り換えても違和感がまったくないのはワークスブランドだからこそ。装着には構造変更が必要で、装着対応グレードがGR-SとROCCOのみとなっているなど、装着のハードルは低くはないが、迫力あるワイドボディスタイルは文句なしにカッコいい。このスタイルを見慣れてしまうと、もうノーマルでは物足りなくなってしまいそうだ。
MUGENM-TEC
[モデル1]MUGEN CIVIC TYPE R Gr.B
無限はシビック・タイプRとプレリュードの2台を持ち込んだ。時節柄、プレリュードに注目してしまいがちだが、無限がより強く推すのはシビック・タイプR、それも「究極のタイプR」を標榜するタイプR Gr.Bだ。シビック・タイプRはもともと、サーキット走行も前提とした高い動力性能を有しているが、それをさらに高い次元に昇華させたのがこのGr.Bだ。そのために行なわれたのが軽量化と空力性能の向上だ。結果から話せば、ノーマル比38㎏の軽量化と3倍ものダウンフォースを獲得している。もうそれだけ聞いてもその性能の高さがうかがい知れるというものだが、国際規格のサーキットでの走行性能の向上を目的に開発されたこれらのパーツはまず、必要なダウンフォースを発生できるエアロパーツを開発。いずれもそれなりの大きさになることから、重量増を嫌って素材にドライカーボンを採用。ダウンフォースと軽量化を合わせて実現。厳しい熱問題に対応するため、放熱性も考慮されている。さらに触媒以降からの交換となるチタンマフラーは、純正の3本テールから1本出しへと変更。これも軽さを考えてのこと。このマフラーでも約8.5㎏の軽量化が実現する。もちろん、軽さや見た目の変化だけでなく、中間トルクがアップするなどの効果もある。
実際に走らせてみると、今回の試乗コースがジムカーナコースのような場所だったこともあり、ノーマルの3倍というダウンフォースを発生するエアロパーツの効果を実感するには至らなかったものの、同じくGr.Bの商品として設定されているブレンボのブレーキのタッチ、フィーリングが素晴らしく、制動力もさることながらブレーキングの楽しさに酔いしれた。オリジナル設定だというパッドも、街乗り程度の速度域でも鳴きが発生せず、ローター攻撃性も低いというから、サーキットに自走で行き帰りできるというコンセプトにも偽りなしという点は確認できた。余談だが、キットに採用されている鍛造キャリパーは、重量を考慮した部分もあったという。
高い効果が実証されているパーツ群だが、その分、価格はそれなりにお高め。もちろん、それに見合った性能は得られるが、お手頃価格ではないことはお伝えしておく。Gr.Bパーツは人によってはやりすぎにも思えるほどの贅沢さだが、そこまでは……という人にはGr.Aのパーツ群もある。そちらのパーツが装着されたシビック・タイプRにも試乗したが、少なくとも今回の試乗コースではGr.BタイプRにも楽しさでは劣っていなかった。鈴鹿などのサーキットで比較すれば差もあるのかもしれないが、究極と現実的の2つの選択肢が用意されているのは魅力的だ。
[モデル2]MUGEN PRELUDE
注目のプレリュード用アイテムはエアロパーツ、マフラー、パフォーマンスダンパーなどの専用品をいち早くリリース。まだ街中で見かける機会は少ないプレリュードだが、実際にそれらが装着された試乗車が用意された。流石はメーカー系ブランドならでは、といったところだろう。とりわけ注目したいのはスポーツエキゾーストシステムだ。心地よい音が楽しめるとのことだったので、S+モードで踏み込んでみると、後方から届く音に“エンジン車に乗っている”感に包まれる。コース周辺を回送するような場面ではとりわけ排気音を意識させられることもなかったため、踏んだ時に適度な音が楽しめるマフラーは車両のキャラクターにマッチしていると感じた。また、クルマを降りると、エアロパーツに目が行く。とはいえ、後付け感があるものではなく、これまた車両キャラクターにマッチした適度なスポーティさをプラスしてくれるものとなっていた。
NISMO日産モータースポーツ&カスタマイズ
[モデル1]NISSAN GT-R(R35)2013年モデル
CRS(CLUBMAN RACE SPEC)+サスペンションバージョンアップキット(T-spec仕様)装着車
NISMOが持ち込んだのはGT-R、オーラNISMO、エクストレイルNISMOの3台。GT-Rとオーラについてはパーツの追加だけでなく、動力性能も高めたものとなっていた。まずはGT-Rだ。2013年モデルをベースとした試乗車には、興味深い提案型ともいうべきメニューが数多く投入されていた。そのひとつがサスペンションバージョンアップキット。純正部品を使い、足まわりを最新モデル同様にアップデートするもので、試乗車はTスペック仕様となっていた。NISMO仕様の足まわりを選ぶことも可能とのこと。とはいえ、最新の足まわりを装着しておしまい、というわけではない。長いモデルライフを持つGT-Rでは、足まわりの基本的な部分こそ変わっていないものの、年式によってそれを形作る周辺パーツの組み合わせが変わっており、その組み合わせは9通りにも達するとか。それを年式ごとに装着可能としている点もポイント。また、キットを構成するパーツはすべて純正品のみという部分も信頼性の面で魅力的だ。今冬の発売が予定されているが、構成パーツの違いで年式によって価格が異なることと、R35の純正パーツは値段が高いため、キットの値段もそれなりのものとなる、という点は知っておきたいところ。
試乗車には、07-10MY向けに販売しているS1エンジンの試作仕様が搭載されていた。カムシャフトをGT3仕様に変更し、専用ECM&TCMにより、最高出力は17年モデル基準車並み、最大トルクは17年NISMO並みに向上しているとのこと。
実際に乗って踏み込んでみると、相変わらずの恐ろしいほどの速さ。あまりの速さに全開にできるのはほんの一瞬。刺激的な試乗をひと時楽しませてもらった。12年前のモデルでもこれだから、リフレッシュメニューとしては究極と言って差し支えないだろう。さらに、純正に準じた仕様だから、これまた信頼性の面で長く乗り続けたい人には魅力的なメニューなのではないだろうか。
18年に渡って生産されたGT-Rでは、各部のリフレッシュが必要となっている個体もあるだろう。ただリフレッシュするだけではなく、最新型に準じたアップデートで愛車の質感を高められるこれらのメニューは相当に魅力的だ。オーナーならばなおのこそ、その違いに大きな感動を覚えるはずだ。
[モデル2]AURA NISMO tuned e-POWER 4WD
NISMOパーツ装着車
オーラとエクストレイルは新車で買えるNISMOバージョンに、それぞれ内外装パーツを追加したものだが、オーラについてはスポーツリセッティング・タイプ2が施されている。オーラ(ノート)のスポーツリセッティングはモーターの出力、回生特性の変更、ドライブモードのチューニングなどによって、より走りの楽しさを実感できるようにされたもので、数々のチューニングをわかりやすく体感できるNISMOモードで走り出してみると、まるで引っ張った輪ゴムを放したかのごとく、弾けるような加速感とその速さにまず驚かされる。コーナーでもしっかりした接地感が続く、スタビリティの高さにも驚かされた。これはスポーティに小回りしやすく調整されたという4WD特性の賜物だったのだろう。走りの楽しさは、アクセルやブレーキで加減速を思ったようにコントロールすることで生まれることも多いが、まさにそれを実感できるクルマになっていた。実際、オーラやノートのオーナーの間で人気メニューとなっているそうだが、大いに納得できた。
[モデル3]エクストレイルNISMO
性能向上よりもドレスアップ的な意味合いの強いパーツ装着に止まったエクストレイルNISMO。台数の多い人気モデルだけに、そうした“ちょっとした”ドレスアップも他との差別化という点で楽しいだろう。
Photo/Text Team Gori